洋ナシ(西洋梨)(pear)の特徴・旬の時期・産地・品種、栄養素、保存方法、選び方、切り方
特徴
西洋梨は、ヨーロッパ原産のバラ科ナシ属の果実であり、一般的には“洋ナシ”と
呼ばれます。
日本国内はもちろん、アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパなど、世界各地で広く食用栽培されています。
洋ナシの大きな特徴といえば、その“形”でしょう。
品種にもよりますが、和梨のような丸い球形ではなく、上が細身で下の部分は丸みを帯びたような独特な姿をしています。
食感は、シャキシャキとさっぱりした和梨とは違い、洋ナシはねっとり感があるのが特徴です。
また、洋ナシは、“追熟”が必要な果実で、収穫後2週間~1ヶ月で美味しく頂けます。
(収穫時は果皮が緑色で硬く、甘みが少ないです。熟すと黄色っぽくなり、食べごろとなります。)
旬の時期
早生種のものは、8月中旬頃には収穫となります。
そして9月以降、様々な品種が出回り始めます。
知名度が高く、馴染みのある洋ナシの代表、ラ・フランスは10月に収穫され、
追熟期を経た後、10月下旬~12月にようやく食べ頃である“旬”を迎えます。
おもな産地
西洋梨、つまり”洋ナシ“は、ヨーロッパが世界一の総生産量を誇っています。
イタリア、フランスなどが上位を占め、日本は世界ランキング12位前後に位置します。
日本の風土は、洋ナシの栽培には不向きであるため、限られた地域でのみ栽培が可能です。
洋ナシ総生産量の7割近くを誇っているのは、山形県です。
次いで、青森、新潟、長野、福島、岩手、北海道などが上位に挙げられ、
国内生産量の9割を占めていると言われます。
こうしてみてみると、洋ナシ栽培に適しているのは、寒冷地域である東北や北海道、信越地方だということが分かります。
品種と特徴
現在4000もの品種が存在する中、日本では、約20品種が生産されています。
以下に、主な品種と特徴を栽培面積順にご紹介いたします。
(②以下は、栽培面積が激減し、稀少な品種も含まれます。)
ラ・フランス
日本の洋ナシと言えば、ラ・フランスです。
国内洋ナシ生産量の7割近くを占めており、生産地は山形が有名です。
ラ・フランスの生産量は、和梨の代表である“二十一世紀梨”や“新高梨”の生産量に値します。
1864年にフランスで発見され、1903年に日本に入ってきた当時は、食用ではなく受粉用として使われていたようです。
重さ250~300gの中玉サイズ。
果皮は緑~黄緑色の中に灰褐色が混じったような色合いです。
外見はゴツゴツした感じで、いびつな形をしています。
追熟後の果肉はやわらかく、果汁たっぷりで、まるで高級マスクメロンのような食感です。
甘みたっぷりですが、やさしい酸味が味を引き締めてくれます。
また、芳醇な香りが漂うのも大きな特徴で、西洋梨の最高峰と呼ばれています。
収穫時期:10月初旬~下旬・食べ頃:10月下旬~1月中旬
ル・レクチェ
新潟県で生産され、新潟市南区での生産量が最も多いです。
1882年頃、フランスで交配育成され、苗木をフランスから取り寄せて栽培したのがきっかけと言われています。
栽培方法の改良などで生産量が増えてはきたものの、稀少な品種の一つです。
重さ300~450g。ラ・フランスよりやや大きめです。果皮は黄緑色をしており、時間とともに、熟したバナナのような黄色になります。見た目は艶やかで、所謂、“さび”が少なく美しい姿をしています。
果肉は滑らかで、果汁たっぷりで甘さをしっかり感じますが、適度な酸味が味を引き締めてくれます。
また独特な香りを漂わせているのも特徴で、“西洋梨の貴婦人”、“幻の西洋梨”と呼ばれているのも頷けます。
収穫時期:11月初旬~中旬・食べ頃:11月下旬~12月下旬
バートレット
北海道が生産量1位で、青森、山形と続きます。1770年頃イギリスで発見された品種で、1799年にアメリカが輸入をして栽培を始めました。(諸説あるようですが、バートレットの名は、栽培地を取得した、エノク・バートレット氏の名に起源します。)
重さ220~280g程のやや小ぶり玉。完熟を見極めるには、果皮が黄緑色から黄色の強みが出て、果梗付け根辺りが柔らかくなった頃が目安となります。
適度な酸味があり、他の洋ナシと比べ甘みはおさえられていますが
食感は滑らかで、ジューシーさはしっかりあります。
バートレットは、完熟直前まで果肉が固いというのも特徴で、果肉崩れが起こりにくいことから、缶詰用に加工される品種としても知られています。
収穫時期:8月下旬・食べ頃:9月初旬~中旬
オーロラ
山形が半分以上を生産し、次いで北海道が生産地となっています。
1950年にアメリカのニューヨーク州で、“マルゲリト・マリーラ”と“バートレット”の交雑実生からこの品種が誕生し、日本には1983年に導入された品種です。
重さ300~400gと大きめ。早生種の品種であるものの、洋ナシの良質をしっかり保っています。
追熟したオーロラの皮はナイフでスルスルと剥けるほど、とても柔らです。
食味は、甘みと酸味のバランスがよく、果汁もたっぷりで、とろけるような食感があります。
収穫時の果皮の青さが追熟で濃い黄色になり、芳醇な香りが感じられ、食べ頃が分かり易いというのも特徴です。
収穫時期:9月初旬・食べ頃:9月中旬~下旬
ゼネラル・レクラーク
青森県を筆頭に、山形、岩手、福島などで栽培され、北海道も産地として知られています。
ゼネラル・レクラークは東北と北海道のみで生産される品種です。
1950年にフランスのパリ郊外で発見され、1977年頃日本に入ってきました。
苗木が青森のリンゴ研究所に導入されたことがきっかけで、青森がこの品種の産地となりました。
重さ400~600gの大玉。表面はサビがかなり多いです。
黄緑色の果皮ですが、熟すと黄色というよりも“金色”になります。
果肉はかなりジューシーで、熟すととろける食感になります。
甘みと酸味を兼ね備え、香り高く、濃厚な味わいです。
収穫時期:9月下旬~10月中旬・食べ頃:10月下旬~12月上旬
マルゲリット・マリーラ
山形、青森、北海道、秋田、岩手、福島などの北海道・東北エリアを中心に生産されています。
1874年にフランスのリヨン郊外で発見された、大型の西洋梨です。
発見者の名からこの品種名が付けられました。
重さ400~800gの最大級の大玉。数ある西洋梨の中でも、この品種は均整のとれた姿をしています。
表皮は、他の品種と似て収穫時は黄緑色ですが、追熟した頃には輝くような黄金色になるというのが特徴です。
果肉は白っぽい色をしていますが、熟するにつれて黄色みがかってきます。
他の品種と比べて糖度は高くないのですが、酸味が少ないため、上品な甘みがあります。
収穫時期:9月中旬・食べ頃:9月下旬~10月中旬
シルバーベル
山形県産が7割近くを占めています。秋田、岩手、福島も生産されています。
群馬県も生産地として挙げられ、関東地方では珍しい洋ナシ生産です。
1957年にラ・フランスの自然交雑実生から育成された品種で、妹的存在です。当時の育成者、鈴木寅雄氏の苗字の「鈴」=「ベル」をつけたと言われています。
重さ350~450gの中玉サイズですが、800g程の超大玉サイズのものもあります。
この品種は姉的存在のラ・フランスより全体が大きく、長細めの形をしています。
緻密な果肉で果汁たっぷり。
甘みがとても強いのが特徴ですが、適度な酸味があるので、芳醇な味わいがあります。
また、ラ・フランスと同様、西洋梨独特の食感と香りが楽しめます。
収穫時期:11月上旬~下旬・食べ頃:12月上旬~1月下旬
(晩生種であるこの品種は、貯蔵性も高いので2月頃まで出回ることもあります。)
バラード
山形、青森、北海道、岩手、秋田が生産地です。
1984年、山形県寒河江市の園芸試験場にて、“バートレット”に“ラ・フランス”を交配することで、育成された品種で、1999年に品種登録された比較的新しい品種です。
重さ350~500gと幅があります。
他の品種に比べると、やや整った瓶の形をしています。
ラ・フランスは、熟しても表面は黄緑色のままですが、バラードは黄色に変色することと、大玉になるという特徴があります。
糖度の割には酸味が控えめなので、強い甘さを感じます。
果汁も多いので、果肉がほぐれるような柔らかい食感です。
収穫時期:9月下旬・食べ頃:10月上旬~下旬
マックスレッド・バートレット
秋田県が国内生産量6割以上です。
“バートレット”の枝変わりとして、アメリカのワシントン州で発見された品種です。
重さ220~300g小ぶり~中玉サイズ。
一番の特徴は、表皮が赤色であることです。全体的に黄緑色の地ですが、水彩絵の具や色鉛筆で赤色をやさしく塗ったような感じに見えます。
完熟すると果汁たっぷりで、果肉は滑らかな食感になります。
バートレット同様、甘みは強く感じないものの、香り高い品種です。
収穫時期:9月中旬・食べ頃:9月下旬~10月上旬
(出盛り期が短いので、貴重な品種です。)
フレッシュ・ビューティー
主な産地は青森県です。次いで、秋田県、岩手県、北海道で生産されます。
1800年代初期、ベルギーのフランダースにて発見され、その後アメリカでも栽培されるようになりました。日本に導入されたのは、1868年(戊辰戦争時)です。
歴史あるこの品種が、日本国内栽培として初の西洋梨と言われています。
現在フレッシュ・ビューティーは、稀少な品種となっています。
重さは450gほどの大玉。ふっくらとした、きれいなたまご型をしているのが特徴です。果皮の色は黄緑ですが、日光に照らされた部分はやさしい赤色に染まっています。日に当たった面が赤いということから、“日面紅(ひもこ)”という愛称で呼ばれることもあります。
食べ頃になると、表面は黄色に変色し、小さな果点がちりばめられます。
果肉は乳白色で、芳香と甘みが強いです。
また、やや荒めのざらつきを感じる舌触りです。
収穫時期:9月下旬~10月上旬 食べ頃:9月下旬~10月上旬
栄養素
梨は、栄養学的な価値は高くないと言われます。また他の果物と大きく違う点は、
“ビタミン”をほとんど含んでいないことです。
しかし、梨を頂くことで身体に良い成分が沢山含まれていることと、
薬的な効果もありますので、ご紹介していきます。
(洋ナシの成分は、和梨とほぼ同様ですのでご承知おき下さい。)
アスパラギン酸
アミノ酸成分の一種で、夏バテをはじめ、疲労回復に効果を発揮します。
カリウム
身体の血液中にあるナトリウムイオンの増加を防ぎ、高血圧防止にも
効果的です。また、利尿作用もあり、老廃物も排除してくれます。
ソルビトール
冷涼感と甘さのある“糖アルコール”の成分が、解熱や喉の炎症をおさえ、
咳を鎮める効果もあります。
プロテアーゼ
タンパク質を分解する消化酵素です。
食後に梨を頂けば、消化促進の効果を発揮してくれます。
また、肉を柔らかくするという調理効果もあります。
梨の成分の90%近くは水分で、人間の体に必要なミネラルそのものです。
洋ナシに含まれる豊富な水分が、新陳代謝を促してくれる。
まさに健康を保ってくれる果物ですね。
日持ち期間と保存方法
すぐに食べない場合は、明るめの黄緑色をしたものや、硬めのものを選ぶと良いです。
乾燥を防ぐためにも紙袋等に入れて、室内保存(15~20度位)がおすすめです。
追熟されて食べ頃になります。
沢山ある場合には、食べる分以外は更に温度の低い場所に保存しておくと良いでしょう。
食べ頃になった洋ナシは、冷蔵庫に入れておくとエチレンガスが充満するので、
傷みが早くなります。長期保存には冷蔵庫は不向きです。
なるべく食べる分だけ購入することをおすすめします。
ミカンやブドウ、バナナなど、果物を冷凍して頂くこともあります。
同様に、洋ナシも冷凍保存によって、違った味を楽しめます。
皮を剥いて櫛形にきり、芯をとります。レモン汁をからめてバットなどに並べて冷凍した後、半解凍の状態でシャーベットとして食べると美味しいです。
普通のシャーベットのようなゴリゴリした感じではなく、ねっとり感のある柔らかい
食感が、洋ナシの美味しさそのものです。
コンポートにしたり、ミキサーにかけてピューレ状にしておけば、ムースなどの
デザートにも生かされます。
選び方
果物の中でも、おいしい“洋ナシ”を選ぶのはとても難しいと言われています。
固いまま収穫され、追熟後に食べ頃となるからです。
美味しい洋ナシの見極めポイントをご紹介します。
皮の状態をチェック
・軸の周り(肩)に弾力があるもの
・軸が茶色く枯れたようにみえるもの(食べ頃の合図)
・張りのあるもの
・表皮に傷のあるものは避ける(中身が傷んでいる可能性がある)
色や香りの有無をチェック
・品種にもよりますが、黄色みがかったもの
・変色のあるものは避ける
・甘い香りがしているもの
形や硬さなどをチェック
・ふくよかな形をしているもの
・大きさが同じであれば、重みを感じる方を選ぶ
・やわらかすぎるものは避ける(適度な硬さの物を選ぶ)
切り方
洋ナシはデコボコした形状をしているため、皮を剥いたり切ったりするのが
難しいと感じる方も少なくないでしょう。
カット後は、切り口の面が酸化して茶色くなってしまうので、レモン汁をかけたり、
塩水に漬ければ、変色防止にもなることを知っておくとよいでしょう。
品種は色々とありますが、基本的な洋ナシの切り方をご紹介します。
① 半分に切る
② 種部分をスプーンでくり抜く、または包丁等で切り落とす
(芯抜きがあれば便利です。上から下へ突き刺して、下から上へ押し出します。
芯と共に種もきれいにとれます。)
③ 食べやすい大きさ(4~6分割位)に切る
④ 皮を剥く
上記は普通の串型の切り方ですが、少しお洒落な感じで丸い(輪切り)にカットする方法もあります。
上の③の工程で、洋ナシを横向きに寝かせ、好きな幅に切って、最後に皮を剥きます。
他にもデザートの盛り付け用の切り方など色々ありますが、いづれにしても
完熟した洋ナシはとても柔らかいので、実をつぶさないようにするのがポイントです。