りんご(apple)の特徴、品種、保存方法等
バラ科リンゴ属(英)Apple(仏)Pomme
初秋~冬に収穫される落葉果樹で、ヨーロッパ東南部が原産と考えられています。
北アメリカへ伝わったのち、明治時代に日本にやってきて、栽培されるようになりました。
青森県つがる市には、明治11年(1878年)に植えられた日本でいちばん古いリンゴの木があります。
三本が青森県天然記念物に指定されており、今でもリンゴを収穫することができます。
その木の高さは7メートル以上にもなります。
旬の時期
リンゴは、スーパーマーケットなどの店頭では一年中見かけることのできる、親しみやすい果物です。
初秋~冬が旬の果物ですが、年中食べることのできる秘密はどこにあるのでしょうか。
それは、特別な貯蔵用の冷蔵庫にあります。
春以降に出荷されるものについては、秋の収穫後に、湿度や酸素の濃度を調整して鮮度を保つことのできる専用の冷蔵庫に入れて、半年以上大切に保管されたものを少しずつ出荷していきます。
リンゴ園では、5月になると白い花と甘い香りに包まれます。
大きくておいしいりんごを作るために、花粉をつけたり、みつばちを放したり、つきすぎた花を摘み取ったりします。
初夏には、大きな実を作るために、つきすぎた若い実を摘み取る作業をします。
そして9月になると、緑色だった果実が赤く色づいてくるのです。
一年間大事に栽培されたリンゴは、秋から冬の短い期間に一年分収穫されます。
●葉取らずリンゴ、まだらもようはおいしさのしるし
通常のリンゴ栽培では、真っ赤できれいな色づきになるよう、実のまわりの葉を積んでしまいます。
リンゴは、日の光があたるほど、よく色づく特徴があるからです。
しかし、葉を摘まずに栽培したリンゴは、見た目には色むらが出ますが、葉の光合成で作られた養分やおいしさがしっかりと詰まったりんごになるといわれています。
●リンゴの皮のべたべた
スーパーマーケットなどの店頭で、リンゴの皮がべたべたしているものを見かけたことはありませんか?
リンゴは、その品種によって、皮がべたべたしているものがあります。
油や農薬をぬっていると勘違いされがちです。
けれども、これはリンゴの皮からしみ出た油です。
実が熟したころ、果実を雨などから守るためにだされる油なので、食べても安全です。
主な産地
リンゴの木は冬の寒さに強く、また秋の涼しさによってリンゴの色がよくなるため、寒いところで栽培されています。
主に、日本の中ほどから、北の地方でつくられています。
青森県、長野県の二大産地のほか、山形県、岩手県、福島県、そして秋田県となっています。
特に青森県では、日本のリンゴの約6割を生産しており、その量は年間44万トン以上にもなります。
主な品種と特徴
日本には、1000以上のリンゴの品種があると言われています。
「ふじ」をはじめとする日本のおいしいリンゴの品種は、世界中で人気があり、育てられています。
ここでは様々なリンゴの品種の中から、主なものを取り上げその特徴を紹介していきます。
ふじ
青森県で育成された、国内生産第一位のリンゴです。
リンゴといえば「ふじ」、というくらい、世界中で親しまれている品種です。
「ふじ」のはじまりは1939年(昭和14年)、青森県に開場された農林省園芸試験場東北支場にあった「国光(こっこう)」の花めしべに、現青森県産業技術センターの研究所から提供された「デリシャス」の花粉を交配し、この年は274個の果実を収穫しました。
そこからとられた種をまいて植え付け、選抜してできたものが始まりです。
正式に「ふじ」と命名されたのは、1962年です。
日本一の富士山、生まれ育った青森県藤崎町にちなんで、命名されることになりました。
今では海外でも「Fuji」として親しまれています。
「ふじ」の特徴は、果汁がとても多く、しゃきっとした食感で甘味と酸味のバランスが良いことです。
一般的に、袋をかけて育てる「ふじ」、袋をかけずに育てる「サンふじ」とに名前が分かれて流通し、店頭に並びます。
袋をかけると、リンゴの赤い色がきれいに出ておいしそうに見えますが、実は太陽の光を多く浴びる「サンふじ」のほうが糖度が高いと言われています。
蜜が入りやすく、甘味も強いのが特徴です。
おすすめの食べ方は、そのままか、ジュースにして、芳醇で豊かな果汁を楽しんでみてください。
旬の時期は10月下旬から翌1月初旬です。
袋をかけて育てる「ふじ」は、リンゴの皮が薄く、皮ごとたべやすく、貯蔵性も高いというメリットがあります。
「サンふじ」が店頭からなくなってしまう4月頃から並び始め、8月ころまで、特別な冷蔵庫で保存されたものが並びます。
つがる
国内生産量第二位のリンゴです。
青森県で育てられた品種で、リンゴの中では早い時期に収穫できる早生種です。
8月中旬から9月が旬のリンゴで、果汁が多く甘味が強いことが特徴です。
酸味はほとんど感じられません。
また、硬くてしっかりと詰まった歯ごたえが特徴です。
王林
青いリンゴの中で、最も多く生産されているリンゴです。
なしに似た、独特のしゃきっとした歯ごたえを持ち、芳醇な香りが特徴で、10月下旬から12月が旬の時期です。
福島県で生まれ育った品種で、リンゴ生産高全国一位の青森県でも、ふじ・つがるの次に生産量の多いリンゴです。
表面の果点は、熟すごとに目立つようになってきます。
熟しすぎないうちに食べることがおいしさの秘訣です。
熟しすぎると、色が緑色から黄色がかってきますので、おしりの部分が緑色になっているものを選ぶと、そのさわやかな香りを楽しむことができるでしょう。
紅玉
果皮が濃い赤色でつややかな張りがあり、生で食べると、その酸っぱさに驚かれるリンゴです。
けれども、調理用には最適で、アップルパイなどの菓子やジャムにするとちょうどよい甘さになります。
砂糖で煮ても煮崩れしにくく、触感を残したままおいしく加工することができます。
特に焼き菓子を作る際にリンゴのフィリングを作ると、その違いが際立ちます。
ほかのリンゴの種で作ったものよりも美しい紅色を残したまま作ることができます。
「ふじ」「つがる」などのリンゴより、旬が短く、手に入りにくいことが難点です。
旬の時期は10月のほんの数週間とも言われていますので、見かけたらぜひ手に取ってみてください。
ジョナゴールド
アメリカ生まれの、ぴかぴかとしたつやのあるリンゴです。
「紅玉」と「ゴールデンデリシャス」をかけ合わせて作られました。
甘味と酸味の両方を、しっかりと味わえる、しゃきしゃきした食感の品種です。
酸味を活かしてお菓子作りや加工品にもよく利用されています。
「紅玉」よりもスーパーマーケットなどの店頭で手に入りやすい品種のため、家庭の調理用にも適していると言えるでしょう。
シナノゴールド
その名の通り、長野県で育成された品種です。
きれいな黄色(ゴールド)のリンゴで、さわやかな風味が感じられます。
海外でも人気の品種で、ワインなどにも加工されています。
栄養素
「一日一個のリンゴは医者を遠ざける」という言葉をご存じでしょうか。
リンゴは栄養価が高く、消化もよいため、ヨーロッパやアメリカでは昔からこう言われてきました。
甘く、酸味のバランスのとれたリンゴは、どのような栄養があるのでしょうか。
●カリウム
細胞内液の浸透圧を調整し、一定に保つ働きをします。
ナトリウムをからだの外に排出しやすくする働きがあり、塩分摂取過剰を調節する役割もしています。
カリウムが不足すると、脱力感や不整脈などからだの不調がみられることがあります。
●ペクチン(食物繊維)
果物に含まれる食物繊維のペクチンは、水溶性食物繊維です。
糖質の消化管での吸収を遅らせて、急激に血糖値が上がることを抑える働きがあります。
また、コレステロールの吸収を抑えたり、心疾患の発症リスクを低下させるといった作用があります。
●果糖、ブドウ糖
ブドウ糖は脳が唯一エネルギーとして利用できる物質で、人のからだにとって重要な栄養素です。
果糖は脂肪をエネルギーに変える作用があります。
ただし、果糖もブドウ糖も、摂取しすぎることなく適切な量を心がけましょう。
食事は栄養のバランスが大切です。
日持ち期間と保存方法
リンゴは、果物の中では日持ちのする果物です。
収穫時期によって、その時期の早い順に極早生種、早生種、中生種、晩生種に分かれています。
収穫時期によって日持ちが変わり、一般的に収穫時期が早いほど日持ちがしないものが多いといえます。
また、リンゴはエチレンというガスを多く出していることが特徴です。
エチレンガスは、植物を老化させる働きがあるため、リンゴと一緒にほかの野菜や果物をおいておくと、ほかの野菜や果物の成熟がすすんだり、早くいたんでしまいます。
リンゴだけポリ袋などに密閉して、冷蔵庫の野菜室にいれておくことがおすすめです。
袋に入れることで、リンゴ自体の乾燥も防ぐことができます。
リンゴは寒いところでつくられる果物なので、暑さがとても苦手です。
室温でも涼しい時期は保存できますが、10度以下になるよう心がけて、冬でも暖房の効いた部屋は避けたほうがよいでしょう。
リンゴの特徴を活かして、まだ硬いバナナやキウイを一緒の袋に入れて、早く追熟させる方法もあります。
選び方
スーパーマーケットなどの店頭に並んでいるリンゴは、出荷前の選果場で、痛んでいるところがないかを目で見たり、センサーで内部の品質を確認したりして出荷されます。
その中でも特においしいリンゴを選ぶには、どのようなところに注目したらよいでしょうか。
まず、リンゴの表面の皮を見て、皮につやがあり、ピンと張ったものを選びましょう。
また、香りがよく、手にとったときに重みを感じられるものもおいしいリンゴです。
次にリンゴのつるを見てみましょう。しっかりとした太さがあり、ピンと立っているものが良品です。
地元の農家さんに教えてもらった技
デコピンみたいにして叩いた音で、おいしいかどうか分かります。
高い音のリンゴが美味しいです。
何個か試すと分かってきます。またその音で蜜が多く入っているかも分かります。
何個か並べて、音の高い順に並べ替えて、蜜の多さやおいしさ等を比べていくと、大分精度が高くなってきます。
切り方
リンゴを切った後は、果肉が茶色に変色するため、その予防として塩水にしばらくつけておくとよいでしょう。
リンゴには、ポリフェノール類を酸化させる酵素であるポリフェノールオキシダーゼが含まれます。
この成分はしぶ味として働くため、切った後そのままにしておくと、茶色くなってしまいますので注意しましょう。