「柿(persimmon)」の特徴、産地、旬の時期、品種、栄養素、選び方、切り方
特徴
中国が原産である柿の木は、カキノキ科カキノキ属の落葉樹です。
その果実が“柿”として食され、多くの日本人に好まれる秋代表の果物です。
諸説ありますが、柿の歴史は奈良時代に遡り、遣唐使によって伝えらました。
品種は細かく分けて1000近くありますが、日本国内の柿は大まかに
“甘柿”と“渋柿”に分類されています。
甘柿は“生のまま食べて、渋柿は“干し柿”として食べるのが一般的です。
また、柿の木の幹は家具材として利用され、葉は“お茶”として加工されます。
柿はヨーロッパでも栽培され、そのうち9割を占めているのが、スペイン産です。
柿は日本から伝わったこともあり、欧米においても“Kaki(かき)”と呼ばれます。
旬の時期
10月~11月は、一番多くの品種が市場に出回る“旬”の時期にあたります。
ハウス栽培など、夏(8月頃)に収穫が始まるものもありますが、
本格的な収穫期は、10月中旬頃から11月にかけてです。
種類によっては、それ以降遅い時期に収穫される柿もあります。
長い間、秋の味覚を堪能できるのは嬉しいですね。
おもな産地
柿はいったいどんな場所で育つのでしょうか?
柿は日本の風土に適していると言われています。
ですから北海道や沖縄地方では難しいのですが、それ以外の地域でしたらどこでも栽培が可能です。
また、柿の栽培面積は約2万ヘクタールにも及びます。
和歌山、奈良、福岡産を筆頭に、東北地方の福島や山形の柿も上位生産量を占めています。
青森から九州までと広範囲で生産されるので、どこでもおいしい柿を食べることができて嬉しいですね。
品種と特徴
全国ほぼどこでも栽培される柿ですが、品種がどれくらいあるのか
ご存知ですか?
柿と一口に言っても、実はその品種は1000以上もあります。
ここで主な品種とその特徴や違いなどをご紹介します。
日本の代表柿と言えば、大まかに以下の3つが挙げられます。
- 甘柿
- 渋柿
- 不完全甘柿
甘柿と渋柿の大きな違いは、“渋み”
柿に含まれる“水溶性タンニン”が、口の中で溶けて渋みを感じます。
甘柿の場合は収穫の頃になると、このタンニンが水溶性から不溶性に変わるので、
渋みがなくなります。
一方で、渋柿はそのような変化が生じないため、渋みが残ってしまいます。
渋抜きには炭酸ガスやアルコールが使われるのが一般的です。
渋抜きがタンニン不溶性への変化をもたらし、甘い柿になります。
各々いくつかの品種例と特徴を挙げてみます。
① 甘柿:温暖な気候が栽培に適しています。
・富有柿(ふゆう)
柿生産量のおよそ8割を占めます。発祥は岐阜県瑞穂市。
丸みをもった四角形の形をしています。皮の光沢感も特徴の一つです。
甘みがたっぷりでやわらかく、ジューシーな味わいが幸せな気分にさせてくれるでしょう。
収穫時期は10月下旬~12月中旬。冷蔵貯蔵され2月頃出荷されるものもあるので、
秋の味覚をいつまでも楽しむことができます。
・次郎柿(じろう)
生産量は、富裕柿や平刻無(ひらたねなし)についで3番目。静岡と愛知で全体の8割以上を生産し、日本一を誇るのは愛知県豊田市です。
ほぼ四角形で、側面に浅い溝のような線があるのが特徴です。
果汁は少なめですが、糖度は高め。ガリっとした噛み応えがあり、さっぱりした食感があります。
収穫時期は10月下旬~12月初旬です。
・太秋柿(たいしゅう)
1994年に品種登録された新しい品種です。
柿の代表格である富裕柿と次郎柿などが組み合わされ、改良されました。
熊本県産が、全国生産の半数以上を占めます。
重さも他の品種の柿に比べて大きく、重さはおよそ400gとジャンボサイズです。
食感はサクサクとしていながら、柔らかさもあります。
富裕柿と次郎柿の特徴をしっかりと受け継いでいます。
甘柿の品種は、その他にも沢山あります。
松本早生(まつもとわせ)、愛秋豊(あいしゅうほう)、御代柿(みだいがき)、
花御所柿(はなごしょがき)、夕紅柿(ゆうべに)、太郎丸(たろうまる)、
貴秋柿(きしゅう)、伊豆柿(いず)、陽豊柿(ようほう)、早秋柿(そうしゅう)他
② 渋柿:夏でも気温の低い地域を中心に生産されます。
・平核無柿(ひらたねなし)
渋柿の約8割を占める品種です。原産は新潟県ですが、福島県や山形県は
生産上位県です。
渋を取り除いて出荷されます。四角形で偏平型、種が無いというのが特徴です。
果汁たっぷりで、甘みがとても強いです。固さがちょうどよいので食感も
楽しめます。
10月下旬~12月上旬に出荷されます。
・刀根早生柿(とねわせ)
和歌山県が生産量全国1位、ついで奈良、新潟です。
この刀根早生柿は、平核無柿の枝変わりです。
奈良の天理で台風によって倒れてしまった平核無柿を、若木に接木して育てたところ、
この平核無柿よりも約2週間早く実を付けたという背景があります。
形や大きさも平核無柿に似ていますが、皮色は濃い目のオレンジで、
光沢感もあります。
甘みたっぷりのジューシーさを特徴としており、固さもちょうどよいです。
ハウス栽培のものは7月には出荷されますが、一般的には9月~10月の出荷です。
・蜂矢(屋)柿(はちや)
岐阜県美濃加茂市蜂屋町が発祥です。柿が“蜂蜜”のように甘かったことから、この街と柿の名前がついたと言われています。
釣鐘状をした先の少しとがった形が特徴で、果肉は見事な橙色です。
また大玉であることから、柿の王様と称されています。
現在は福島県で最も栽培されるこの蜂屋柿。
これを干し柿にした“あんぽ柿”がとても美味しいと評判です。
収穫時期は10月下旬~11月上旬です。
・みしらず柿(身不知柿)
福島県産(会津市)の渋柿と言えば、みしらず柿です。
“身不知柿”の由来をご紹介します。
- 枝が折れるほど大粒の柿がなること=身の程知らずの柿
- 足利将軍に献上の際、“未だかかる美味な柿を見知らず”と賞賛された
- あまりの美味しさに、身の程知らずに食べ過ぎてしまった。
興味深い理由ですね。
食味が良く、絶賛されたこの品種は、毎年皇室へも献上されています。
外見は富裕柿によく似ており、真上から見ると丸く、側面は偏平でハート形に見えます。
大きさは一般の柿よりも大粒です。
食感は柔らかめで、ねっとり感があり、なめらかな舌触りです。
甘さは程よく、口の中にトロリと広がる上品な味が人気です。
出荷前の渋抜き方法は、みしらず柿本来のねっとり感を損なわないためにも、
焼酎が使われることが多いです。2週間ほどじっくり時間をかけて処理されます。
出荷時期は10月下旬~11月下旬です。
その他の渋柿の品種もここでご紹介しておきます。
紀の川柿(きのかわ)、太天柿(たいてん)、中谷早生(なかたにわせ)、富士柿(ふじ)
大和柿(やまと)、愛宕柿(あたご)、江戸柿(えど)、祇園坊(ぎおんぼう)、
四ツ溝柿(よつみぞ)、甲州百目柿(こうしゅうひゃくめ)、市田柿(いちた)他
③ 不完全甘柿:甘柿にも渋柿にも属さない柿になります。
種が多くて全体の渋みが抜けた状態の柿は、不完全甘柿に分類されます。
つまり果実の中に入る種が沢山ある程、渋みが抜けるので甘くなります。
一方で、種が少ないと一部だけ甘くなるということです。
・西村早生柿(にしむらわせ)
滋賀県で偶然発見されたようです。甘柿の代表である富有柿と赤柿の交雑によって
生まれた柿だと言われています。
現在では、福岡県が生産量と栽培面積ともに全国一位を占めています。
やや丸みのある形で、皮色は淡い橙色をしており光沢があります。
程よい果汁と甘さをもち、やや硬めのため歯ごたえを感じます。
断面はゴマとよばれる斑点が見られるのが特徴です。
ゴマが一面に広がってくれば、食べ頃でしょう。ゴマが少ないものは、渋みが強いです。
収穫時期は9月下旬~10月上旬ですので、柿の中で最も早く熟す品種として人気です。
・筆柿(ふで) 別名:珍宝柿(ちんぽう)
江戸時代に愛知県三ヶ根山麓に自生していた品種です。形が筆先に似ていることから、この名前が付けられました。
主に愛知県で生産され、幸田町や西尾市の特産物として有名です。
他の柿に比べ、筆柿は重さ100g前後で小ぶりサイズです。
甘みたっぷりの濃厚な味わいを楽しめます。
西村早生と同様、ゴマと呼ばれる斑点面積が広くなれば食べごろです。
収穫時期は9月下旬~10月下旬で、11月上旬まで出荷は続きます。
栄養素
秋の代表の果物と言われ、もちろん美味しさ抜群の“柿”。
柿を食べると風邪をひかない(ひきにくい)。と昔からよく言われています。
それは、柿に含まれる多くの栄養素のお陰かもしれません。
柿に含まれる様々な栄養素をご紹介します。
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ビタミンAとC
柿1個で一日に必要なビタミンCが摂れるほど豊富に含まれています。
国内の果物の中では、ビタミンCの含有率が一番高いと言われています。
風邪予防やガン予防、疲労回復や老化防止にも大変ありがたい栄養素です。
また薬としての役割として、咳や二日酔いにも効くようです。
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ペクチン・βカロチン・βクリプトキンサンチン・ゼアキサンチン、リコピン等
(これらは“カロテノイド”と呼ばれる赤、黄、橙色を示す天然色素一群です。)
中でも、βカロチンは抗酸化作用があるため、ビタミンCと共に摂取することで、ガン予防はもちろんのこと、肌の再生を促します、
(ちなみに、βカロチンは体内に入るとビタミンAに変換されます。)
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カリウム
高血圧予防や運動後の筋肉痙攣を防ぐ効果もあり、身体に欠かせない
ミネラルです。
利尿作用もあるため、身体の老廃物を流してくれる点でもありがたいです。
その他食物繊維も豊富で、貧血予防や血圧降下にも効果を期待できます。
柿が赤くなったら、医者は青くなる。つまり医者いらずと言われるほど、
栄養価が抜群です。
日持ち期間と保存方法
購入してそのまま放置しておくと、2~3日で柔らかくなってしまいます。
特に渋柿や不完全甘柿は、収穫後に渋抜きをしてから出荷されます。
この工程後も、柿は過呼吸状態でエチレンガスを出し続けるため、
全体が柔らかくなってしまいます。
柿のシャキシャキ感を持続させたい場合は、やはり冷蔵保存が一番です。
冷蔵庫の中でも、温度が最適な野菜室があれば尚良しです。
柿のヘタに水分を含ませたコットン等をあて、そのヘタの部分を下にして、
ポリ袋などに入れて冷蔵庫に入れることをおすすめします。
この方法は、ヘタ部分からの水分蒸発をおさえることができるので、
2~3週間は歯ごたえあるシャキッと感を維持できます。
また、熟した柿などは冷凍保存でシャーベット状にして美味しく頂けます。
*丸ごと(皮つきのまま)冷凍→シャーベットのようにスプーンで食べられる。
*串切りなどにサイズカットして冷凍→少量ずつ食べる。スムージー作りなど。
*ミキサー等でピューレ状態にして冷凍→お菓子やジュース作りなど。
選び方
美味しい柿を見分けるには、以下のようなポイントを基準にすると良いです。
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ヘタをよく見る
・緑がなるべく濃い目を選ぶ(色が残っているもの)
・果実に隙間なく張り付いているもの
・4枚の葉がそろっているもの
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外見をしっかり見る
・全体が濃いオレンジ色をしているもの(カリッと感が好みの場合はやや薄めの色)
・形が万遍なく整っているもの
・ツヤや張り感のあるもの
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手に取ってみる
・重みをずっしりと感じるもの
・柔らかすぎないもの
切り方
柿の形は、四角形、丸みのあるものや、釣鐘状のもの等、種類によって多少違います。
しかし、基本的な切り方は同じですのでご紹介します。
① 柿のヘタの面をまな板の下におく
② 柿の十字線に沿って4等分にヘタに当たるまで切る。
③ 手で4つに分ける。
④ ヘタを切り落としてから、皮をむく。
⑤ 更に食べやすい大きさに切る。
ポイントは、“ヘタ”に注目です。
上の方法でカットすれば、きれいに、無駄なく、美味しく頂けます。