ぶどう(葡萄)の特徴、産地、品種、保存法等
英語名:Grape ブドウ科 落葉果樹
【特徴】
ブドウは全国で広く栽培されている落葉果樹です。
枝がつるのように巻き付いて成長していきます。
ブドウには、6000年以上の歴史をもつヨーロッパブドウと、200年ほどの歴史のアメリカぶどうがあります。
日本には、鎌倉時代に中国から伝わりました。
現在のブドウの品種は、日本の気候に合わせて品種改良されたものです。
ブドウは、世界全体で最も多く生産されている果物です。
海外では日本国内のように生食用に生産されるブドウよりも、加工用(ワイン)にされるブドウが多いです。
【旬の時期】
ブドウは、初夏から秋が旬の果物です。
たわわに実ったブドウの房は、豊かさの象徴と言われいます。
ブドウは永年作物といって、苗木を植えてから実をならすまで数年かけて育てられ、さらに何年もの間、毎年毎年実を収穫され続けます。
その年月は、長いものでは人の一生か、それ以上に長いものもあります。
野菜やイネなどは一年生の草で、毎年種をまき育て、収穫をするので、毎年が新しい栽培となりますが、ブドウは違います。
苗木を植えたばかりの若い木の頃は樹のからだ作りが優先され、年月を経て樹が大きくなるとたくさんの実をつけるようになります。
【収穫時期】
ブドウの一年を見てみましょう。
春になって気温が上がってくると、ブドウの樹は芽を出し、葉を開かせていきます。
6月ごろに枝がかなり伸びてくると、伸びた枝に実をつけます。
夏になり、枝葉は勢いよく伸びた後生長が止まり、実が大きくなって成熟していきます。
光合成でつくられた養分の多くは、実に送られるようになります。
そして次の年の花芽ができるのもこの時期です。
実が成熟したら、次は収穫の時期です。
その後秋から冬にかけては、翌年の生長に向けて、根っこで吸収されたり光合成で作られた養分を枝や根にためていきます。
寒い冬、生長は止まり、春まで休眠します。
落葉樹は、葉の中の栄養が枝や根に送り返されるので紅葉して落ちます。
【主な産地】
ブドウは全国で広く栽培されていますが、夏の夜の気温が涼しく、また土の水はけのよいところで、おいしいブドウが収穫できると言われています。
農林水産省調べによるブドウの生産量ランキングを見てみると、主な産地は山梨県、長野県、山形県、岡山県、そして福岡県となっています。
特に山梨県では、日本のブドウの約21%を生産しており、その量は3万5千トンとなっています。
山梨県、長野県、山形県の3県で日本の約5割のブドウを生産しています。
●日本のブドウ畑とヨーロッパのブドウ畑のちがい
ブドウは乾燥した空気を好みます。
日本は湿気が多い気候のため、ブドウの房によく風があたるように、棚作りの方法で栽培を行われています。
棚作りの方法では、高い棚にブドウのつるを這わせて栽培し、作業者は上を向きながら頭上にあるブドウを収穫するため、大変な作業となります。
一方、ブドウ栽培がさかんなフランス・イタリアなどヨーロッパでは、その乾燥した気候から、地面にならんだブドウの樹から、歩きながら楽にブドウを収穫することができます。
【主な品種と特徴】
ブドウは品種がとても多く、全国各地で栽培されています。
日本では、ヨーロッパブドウとアメリカブドウ、両方のブドウの栽培が行われています。
ヨーロッパブドウの特徴は、皮と果肉が離れにくいことです。
アメリカブドウは皮離れがよく、指でつまむと中身が飛び出す特徴があります。
品種改良もさかんで、この両方のブドウの良さを受け継いだ新しい品種もうまれています。
近年では種なしのブドウが人気があります。
ブドウの開花1週間前と、1週間後にジベレリンというホルモン剤をとかした水に花をつけると、種子が成長しなくなり、種なしブドウができます。
ここでは様々なブドウの品種の中から、主なものを取り上げその特徴を紹介していきます。
「巨峰」
ブドウの王様といわれる「巨峰」。
皮は黒々と光り、大粒のブドウを代表する静岡生まれの定番品種です。
旬の時期は8月中旬~9月中旬。
ジューシーな果汁ととびきりの甘さが特徴で、贈答品にもふさわしいブドウです。
国内の栽培面積ではトップの品種で、3割を占める人気のブドウです。
「シャインマスカット」
果皮が黄緑色で、マスカットの芳醇な香りがあり、硬い果肉の大粒ブドウです。
果皮はうすくかみ切りやすく、皮ごと食べられることが特徴です。
巨峰やピオーネと比べて日持ちもよく贈答品に適したブドウです。
シャインマスカットが品種登録されたのは2006年。
ヨーロッパブドウの、大粒でかみ切りやすく味が良いという特徴と、アメリカブドウの栽培しやすさを引き継いだ品種となっています。
種なしで皮をむかずに食べられることもあり、年々人気が高まり、その生産量は右肩上がりとなっています。
スーパーマーケットなどの店頭でも目玉商品として並ぶようになりました。
「甲州」
ヨーロッパが起源の品種で、日本で1000年以上の長い歴史があるブドウです。
その栽培量は山梨県が全国一位となっています。
山梨県は、日照量が多く、豊かな山々があることから、雨に弱い甲州ブドウの生産に適しています。
「甲州」は、生食用だけでなく、ワイン醸造のためにも栽培されている兼用品種です。
品種としては白ブドウに分類され、その果皮は薄い紫色からピンク色をしています。
日本でワイン用として最も多く栽培されている品種で、そのスッキリと軽やかな味わいは海外からの評価も高く認められています。
「ナガノパープル」
大粒で、巨峰とよく似た濃い紫色のブドウです。
種なしの品種で、皮ごと食べられる品種として近年人気が高まっているブドウです。
巨峰とリザマートを交配させて作られたブドウで、長野県果樹試験場で育成されました。
現在は生産地も長野県に限定されています。
旬の時期は9月~10月中旬、生産量も少なく希少性の高いブドウです。
「ピオーネ」
昭和32年、巨峰と、カノンホールマスカットとの交配によって生まれました。
巨峰の甘さと、マスカットのさわやかさを引き継いだ、大粒で味が良い品種です。
果肉と皮の間に甘味が詰まっているので、いったん皮ごとほおばり、果肉と離した後に皮を口の外へ出して食べるとおいしさを余すところなく感じられることでしょう。
一般的には種のある品種ですが、種のないものは「ニューピオーネ」として出荷されています。
生産量第一位は岡山県。
8月中旬~9月初旬が旬のブドウですが、岡山県は県内の気候の差が大きく、出荷時期をずらして長期間の出荷が可能となっています。
「デラウェア」
小さくてつぶが多いアメリカブドウの品種です。
酸味が少なく食べやすいことから、子どもに人気のブドウです。
旬の時期は7月~8月中旬です。
【栄養素】
ブドウは、甘くおいしいだけでなく、体に良い効果が期待される栄養もたくさんあります。
●ポリフェノール
黒や赤のブドウの果皮に豊富に含まれる、アントシアニンなどのポリフェノールには、抗酸化作用があり、動脈硬化や発がん性物質の原因ともされている活性酸素の効果を抑える作用があり、健康維持への貢献が期待されています。
赤ワインには、果皮のポリフェノールが多く含まれています。
●カリウム
細胞内液の浸透圧を調整し、一定に保つ働きをします。
ナトリウムをからだの外に排出しやすくする働きがあり、塩分摂取過剰を調節する役割もしています。
カリウムが不足すると、脱力感や不整脈などからだの不調がみられることがあります。
●ペクチン(食物繊維)
りんごやキウイと比較すると含有量は少ないものの、ブドウにもペクチンが含まれています。
果物に含まれる食物繊維のペクチンは、水溶性食物繊維です。
糖質の消化管での吸収を遅らせて、急激に血糖値が上がることを抑える働きがあります。
また、コレステロールの吸収を抑えたり、心疾患の発症リスクを低下させるといった作用があります。
●果糖、ブドウ糖
ブドウ糖は脳が唯一エネルギーとして利用できる物質で、人のからだにとって重要な栄養素です。
果糖は脂肪をエネルギーに変える作用があります。
ただし、果糖もブドウ糖も、摂取しすぎることなく適切な量を心がけましょう。
食事は栄養のバランスが大切です。
【日持ち期間と保存方法】
ブドウは、品種にもよりますが果物の中ではあまり日持ちのしない果物です。
買ってきたブドウをそのまま冷蔵庫に入れると、湿度を嫌うブドウはいたみやすくなってしまいます。
房ごと保存する場合は、新聞紙などでブドウを人房ずつ包み、直射日光を避けて冷暗所で保管をします。
ブドウの表面には「果粉(ブルーム)」と呼ばれる白い粉がついています。
これは、ブドウの自身から出た粉です。
実を保護するためのものなので、ブドウを洗うのは食べる直前にしましょう。
ブドウを冷蔵庫で保管する場合、長持ちさせる方法に、枝を房の根元に少し残して房からブドウのつぶを分ける方法があります。
枝を残してひとつぶに分けることで、カビなどの発生を防ぎ、枝へ水分が抜けていってしまうことを防ぐ効果があるそうです。
【ぶどうの選び方】
店頭でおいしいブドウを選ぶには、どのようなところに注目したらよいでしょうか。
まず、ブドウの表面の皮を見て、皮がピンと張ったものを選びましょう。
ブドウの実を守る「果粉(ブルーム)」が表面にたくさんついているものを選びましょう。
次にブドウの枝を見てみましょう。
枝の色が緑に近いもの、または薄い茶色のものが新鮮です。
収穫してから日にちが経ってしまったものは枝が濃い茶色になっていきます。
パックに入っているブドウは、実が房からぽろぽろ落ちていないかどうか、カビが生えていないかどうかよく見て購入するようにしましょう。
【切り方】
ブドウは、ほかの果物と違って小さく切り分ける必要もなく、食べやすい果物と言えるでしょう。
大粒のものや、小さな子どもにも食べやすいように切る場合は、写真のように縦に半分に切ると良いでしょう。
こうすると、果肉の実離れがよくなり、皮の部分を手でもって押し出し、簡単に皮と実を分けることができます。