梨(Japanese pear) の特徴、産地、保存方法等

バラ科 梨

(Japanese pear , Asian pear)


シャリシャリとした食感に、さっぱりとした甘みの水が滴る梨は、秋の味覚を代表する果物です。


店頭に梨の初物が並び始めると、秋の訪れを感じる人もいるのではないでしょうか。

今や諸外国から次々と登場するたくさんの華々しいフルーツががあふれていますが、その中で梨はどこか控えめで気品が漂います。

梨が旬を迎える時期は夏が去る切なさ、秋への移ろいによる哀愁を感じるためでしょうか。


普段店頭に並ぶものを何気なく選び、口にしているかもしれませんが、梨には様々な品種があったり、悠久の時を超えたエピソードがあり、

知れば知るほど奥深い果物なんです。

梨は少しばかり地味な印象(失礼)かもしれませんが、知れば知るほど愛着がわいて、食べるのが楽しみになりますよ。


この記事では梨のルーツや特徴、産地、栄養素、保存方法などについて解説していきます。

梨のルーツについて




梨は日本において、弥生時代にはすでに食べられていたそうです。

それを裏付けるものが、弥生時代後期に存在していた登呂遺跡(静岡県静岡市)から出土した大量の梨の種。

水稲耕作が日本各地に広がりを見せ、原始的な農耕がなされていた時代です。

記録に残っている最も古いものとしては、「日本書紀」に持統天皇が梨の栽培を推奨したとされる記述があります。

693年持統天皇が発した詔(みことのり)によると、五穀の他に桑、紵、梨、栗、蕪等の草木を植えることを勧めたという内容です。

桑(くわ)は蚕を育てるため、紵(からむし)は繊維をとるため。

そして梨、栗、蕪は「以助五穀」と続く記述から、五穀の補助作物として食すためだったと考えられます。

昔、日本人の衣食住を支える大切な役割として梨がその一翼を担ったこと、そして今も我々の身近な果物として存在する梨に、感慨深いものを感じます。

古くから梨は日本人に長く親しまれてきた果物だという事がわかりますね。


梨のルーツをさらにたどると、大元は中国にたどり着きます。

中国では七千万年前以前に中国の南西部の産地で誕生したと言われています。

それからシルクロードを通じて、絹や宗教、文化などと共に梨も分布を広げていきました。

さらに海を渡って日本にも伝わり、今の和梨に分化してきました。

気が遠くなるほど長い歴史を経て、今の姿があるのですね。



梨の分類と特徴について


日本において梨は3種類に大別することができます。

「和梨(日本梨)」「洋梨」「中国梨」です。


それぞれの種類の特徴を見ていきましょう。


「和梨(日本梨)」


日本で「梨」というと大体はこの「和梨」を指し、日本全国で盛んに栽培されている種類です。


和梨はきれいな球形をしており、特徴は何といってもシャリシャリとした食感です。

この特徴から、海外では「サンドペアー(砂の梨)」と呼ばれるほどで、この食感は和梨ならではと言えるでしょう。


このシャリシャリ感の正体は、「石細胞(せきさいぼう)」という細胞壁によるものです。

細胞壁と聞いて、理科の授業を思い出した方もいるかもしれませんね。

果物は果皮が細胞壁をかたく厚くすることで、デリケートな果肉を守っているのですが、和梨においては種子を守るため果肉にも石細胞が存在しています。

そのため和梨はシャリシャリとした独特の食感がでるのです。


もう一つ注目する点は、和梨の皮表面にぶつぶつざらざらとした点がみられることです。

比べるものとしては、似たような形のリンゴがありますが、リンゴの皮表面には見られないものですね。

このぶつぶつは一体なにかといいますと、「果点コルク」の跡になります。

コルクといえばワインの栓が思い浮かぶと思いますが、そもそもコルクとは「コルクガシ」という木の樹皮から採取されるものです。

この樹皮にはコルク層が存在し、木の水分を保つ役割をしているのですが、それがどうして梨の表面に存在するのでしょうか。

それは、梨はもともと皮の気孔と呼ばれる穴で呼吸をしているのですが、果実の成長とともに皮の気孔がこわれてゆきます。

こわれた気孔の部分から中の水分が逃げないようにできたものが「果点コルク」なのです。

この果点コルクのおかげで、梨のみずみずしさは保たれているのですね。


果皮の色にも着目してみましょう。

和梨(日本梨)は果皮の色で「赤梨系」と「青梨系」にわけられます。

皮の色が黄褐色を帯びているものが「赤梨」、皮の色が淡い黄緑色を帯びているものが「青梨」と呼ばれます。


赤梨に代表されるものが、「幸水」や「豊水」などの品種です。

一方、青梨には「二十世紀」などの代表品種があります。

(より詳しい品種については「品種と特徴」で後述します。)


「洋梨」


洋梨はヨーロッパが原産で、少しごつごつといびつで、ひょうたんのような形状です。

果皮は深みのある黄緑色や山吹色のものがあり、ところどころグレージュのムラがかっているので、見た目はお世辞にも美しいとはいえないかもしれません。


ところが追熟した果肉は芳醇な香りを放ち、柔らかくとろけるような食感はまさに開眼するおいしさ。

日本では西洋梨の最高峰と言われる「ラ・フランス」が代表的な品種ですね。

購入時はまだかたいので追熟して食べることになりますが、食べ頃の見極めが難しいのです。

洋梨の食べ頃サインは「保存方法」で後述しますね。


食べ頃を迎えたラ・フランスはジューシーな果肉と非常に芳醇な香りで、しばし夢見心地になるほどです。

他には「ル レクチェ」や「シルバーベル」などの品種も、店頭で出回るのを見かけることが多くなりました。



「中国梨」


中国梨は一般的にはあまり馴染みがないように思いますが、これも日本の一部地域で栽培されている梨です。


形は一見すると洋梨のように見えますが、食感はというと和梨のようにシャリシャリとしています。

中国梨はまるで和梨と洋梨をかけあわせたような特徴がありますね。

日本で栽培されている中国梨の品種には、「千両(身不知)」、「慈梨(ツーリー)」、「鴨梨(ヤーリー)」があります。



梨の旬の時期




梨が旬を迎える時期は品種によって異なりますが、早いものだと7月から、遅いもので11月頃出回る品種があります。


一番早く出回るのが、「新水」という品種です。


新水の次に出回るのが、「幸水」という品種で、幸水は日本における生産量のじつに4割ほどのシェアを誇る、有名な梨です。

この幸水が8月頃に出荷のピークを迎えます。


続いて、幸水と並んで出荷量の多い「豊水」が旬を迎え、9月頃に出荷量がピークになります。

秋が深まるころに旬を迎える梨としては、「晩三吉(おくさんきち)」と「愛宕」があります。

晩三吉は収穫が10月下旬頃になりますが、なんと貯蔵が3月頃までできるという、非常に日持ちのする梨です。

愛宕は、11月下旬ごろ店頭に並ぶ梨です。


いかがでしょうか。実は梨の旬は夏が本格化する7月から、冬の始まりをつげる11月頃までと、非常に長いことがわかりますね。

一般的には国内シェアの高い「幸水」と「豊水」が出荷のピークとなる8~9月頃が梨の旬と言えるでしょう。


主な産地




☆和梨の産地

農林水産省の統計(2018年)によると、国内で栽培されている和梨(日本梨)の収穫量は

1位:千葉県、2位:茨城県、3位栃木県

となっており、続いて福島県、栃木県です。

千葉県と言えば、ゆるキャラで一世を風靡したふなっしーが思い浮かびますね(ふなっしーは梨の妖精(!)です)。

千葉市内では梨狩りを楽しむことができる梨園もあるとのこと。

採れたてのみずみずしい梨を楽しめるなんて、とてもわくわくしますね。



☆洋梨の産地

洋梨では「ラ・フランス」が代表的な山形県が圧倒的収穫量を誇ります。

続いて、青森県、長野県、新潟県、福島県と続きます。

また、「西洋の貴婦人」と呼ばれる「ル レクチェ」は、新潟の農家がフランスから取り寄せ栽培を始めたことをきっかけとして、現在も新潟で収穫されています。ラ・フランスに比べて知名度は低かったですが、収穫量は年々増え、店頭に出回ることも多くなりました。



☆中国梨

中国梨の栽培については、日本でもごく一部の地域となっているようです。

「千両(身不知)」「慈梨(ツーリー)」については北海道、「鴨梨(ヤーリー)」は岡山県で栽培されています。

特に「鴨梨(ヤーリー)」は、日本で唯一、岡山県岡山市西大寺雄神地区でのみ栽培されていることから、

「幻の梨」と言われているそうですよ。

非常に限定的な地域でしか栽培されていないとなると、この品種を守り続ける農家さんの努力は並大抵ではなさそうです。

鴨梨(ヤーリー)ネットショップでも購入できますが、その希少性から贈答用にも好評で、非常に人気があることがうかがえます。


品種と特徴




和梨(日本梨)


【幸水】

和梨の代表的な品種で、生産量は和梨全体の40%をしめ、「豊水」「新水」とともに梨の「三水」と呼ばれています。

赤梨系ですが、緑色にややまだらに茶色が混じった果皮の色をしています。

果肉はやや柔らかめで、果汁がたっぷりと滴り、甘みがあります。


【豊水】

幸水と並んで生産量が多い品種です。350g~400gほどのずっしりとした重量で、大ぶりなのが特徴です。

比較的日持ちが良く、やわらめの果肉で多汁。甘みと酸味のバランスが優れています。


【二十世紀】

青梨系の代表的な品種です。青みを残した黄色の果皮は薄く、和梨の中でもみずみずしさはトップクラス。

甘さは控えめでありさっぱりとした爽やかな味わいです。

鳥取県が主な産地となっています。



洋梨


【ラ・フランス】

その名の通り、もともとフランスで誕生した品種にもかかわらず、手間がかかるということでフランスでの栽培はほとんどなくなってしまいました。250gくらいの中玉で、ごつごつとした形で緑色の果皮にはところどころサビがかっている見た目です。

柔らかく熟した果肉は非常にジューシーで甘く、とろけるような食感は忘れられない美味しさです。


【ル レクチェ】

「幻の貴婦人」「西洋梨の貴婦人」と呼ばれ、フランスで誕生し新潟で栽培されている品種です。果皮は熟すと黄色になり、洋梨にありがちな果皮のサビがなく見た目が美しいので、まさに貴婦人といった品種です。

熟すと芳醇な香りを発し、なめらかな果肉は糖度が16度になるものもあり、ジューシーな味わい。


栄養素




梨にはどのような栄養素があるでしょうか。


梨には水分と食物繊維が多く含まれています。

また、ソルビトールが含まれ、便をやわらかくするので便秘改善に役立ちます。

他にはむくみ解消に効果のあるカリウムとアミノ酸の一種であるアスパラギン酸を含んでいます。

東洋医学では、梨の搾り汁は咳止めに効果があるとされているそうです。

季節の変わり目は体調を崩しがちですが、梨を食べて身体から健康になりましょう。



保存方法




~和梨編~

和梨は追熟させて甘みを増す果物ではないので、なるべく早いうちに新鮮な状態で食べきるがおすすめです。

すぐに食べないのであれば、常温ではなく冷蔵庫で保存しましょう。


冷蔵庫に入れる際は、梨の水分が抜けないように保存することがポイントです。

一個ずつラップをし、さらにビニール袋でしっかり封をします。

さらに、上級テクニックは梨の置き方です。冷蔵庫に入れる際はヘタを下にする形で置きましょう。

梨はお尻の方に糖分が多いので、こうすることで甘みが下側(ヘタの方)へ向かっていきわたるのです。

さらに、水分はヘタから抜けていくので、それを防ぎ鮮度を保つことができます。

冷蔵保存は野菜室にて1週間以内をめどにしましょう。



~洋梨編~

ラ・フランスであれば追熟させて食べごろを待ちましょう。

実はラ・フランスの食べごろの見極めはちょっと難しいのですが、サインを見逃さなければベストな状態で食べられます。

まずは香りが強くなり、軸の周りの果肉に弾力が出てきます。

そして軸の周りにシワが出てくることと、お尻の方に柔らかみを感じたら食べごろのサインです。

確認する際は指でつよく押さないように注意しましょう。

食べ頃になるまでは、水分の蒸発を防ぐために新聞紙などでそっと包み、直射日光を避けた常温で保存することがおすすめです。

贈答などで一度にたくさんいただくこともあるかもしれません。

気温が高い場合は一気に完熟に進んでしまうこともあるので、袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存することにより、追熟のスピードを遅らせることができます。


選び方




果皮に張りがあり、全体に色むらがなく形がふっくらしたものを選びましょう。

また、軸に太さがあり、持ち上げた時にずっしりと重みを感じるものが良いです。

重量感があるものは水分をたくさん含んでいるからです。


前述しましたが、和梨は「赤梨系」と「青梨系」に分けられ、それぞれ熟す過程で果皮の色が変化してゆきます。


品種により若干異なりますが、「赤梨系」は収穫時期により緑~黄土色~褐色と果皮の色に違いがでます。

「青梨系」は、出始めの頃は青リンゴのような黄緑色をしており、次第に黄色のものが出回るようになります。

赤梨系、青梨系ともに出始めの頃はやや酸味を感じるさっぱりとした味わいのものが多いです。

シーズン後半になるにつれ酸味は減り甘みがありますが、完熟期を迎えた梨は、果肉がやわらかくなる傾向があります。

日持ちの面を重視するならば、完熟よりやや前のものを選ぶのが良いかもしれません。


切り方




梨の切り方に特にコツはいりません。

リンゴと同じように「くし切り」にしてゆきますが、皮むきは最後にするのがおすすめです。


1.まずは梨を等分にカットします。8等分くらいがよいでしょう。

2.梨の芯の部分は酸味が強いので、両側からVの字を入れ取り除きます。

3.親指でリードしながらナイフを丸みに沿わせ皮をむきます。


完成です。

お子さんが召し上がる場合や大人数に食べてもらう時などは、1切れ分をさらに3等分すると、ちょうどよいキューブ型の1口サイズになります。

場面に合わせてカットしてみてくださいね。


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